2023.06.01
そもそも、空き家問題とはどのようなことなのでしょうか?
建物を空き家になってしまい放置することによって、老朽化し倒壊する危険が生じます。また、管理する人がいないことを理由に、犯罪や放火などのリスクが高まります。現在、全国でこのような空き家が増えており、「空き家問題」と呼ばれ社会問題にもなっております。
日本では、少子高齢化が進んでおり、人口は減少しております。都市部には人が集中する傾向がありますが、地方では過疎化が進み、高齢になった方が自宅の管理を適切にできなくなるケースも多く見られます。
地方の高齢者が死亡したとき、子どもたちは相続した田舎の不動産に関心がなく、放置してしまうパターンも多いです。それだけではなく、都市部のマンションなどでも空き家問題は発生しています。
かつてニュータウンなどでは精力的にマンション建設が行われ、多くの方が入居しました。しかし、子どもたちが独立して、親世帯の高齢化が進み、入居者が亡くなったり出ていったりしたまま次の入居者が入らず、閑散としている物件が多く見られるのです。
総務省の統計資料によると、全国の空き家は増加の一途をたどります。平成5年には448万戸であったものが、年々増え続けて平成25年には820万戸となっており、空き家率は、13.5%にのぼります。
空き家問題は、どのような人にとっても、決して他人事ではありません。
もしも所有している不動産が空き家になったら、どのような問題があるのでしょうか?
具体的に見てみましょう。
まず、空き家になると、家が荒れます。建物は、人が住んで管理しているときれいに保たれるものですが、人がいなくなったら、一気に朽廃が進むものだからです。
たとえば、壁や屋根などが朽ちてきたりして、周囲の景観も害されますし、治安が悪くなって周囲に迷惑をかけることになります。
空き家として放置すると、害虫や害獣が発生しやすくなります。衛生状態が悪くなり周辺環境も悪化します。
すると建物の有効活用が難しくなるのでさらに放置してしまうという悪循環に陥ります。
たとえば、壁や屋根が崩れ落ちて近くを通った人に危険を及ぼすおそれがあります。またゴミの不法投棄などをされて、異臭が発生する可能性もあります。
空き家によって第三者に損害を与えた場合には、空き家の「所有者」に責任が発生します。もしも子どもたちが空き家を相続していたら、子どもたちが損害賠償をしなければなりません。
空き家を放置していると、犯罪に利用される可能性も高くなります。
たとえば、住宅の中で勝手に大麻草を栽培されてしまったという事件も過去にありました。そのような事件に巻き込まれたら、空き家の所有者も「共犯ではないか」と疑われる可能性があります。
また、放火被害に合うリスクも考えられます。
現在、宅地上に建物が建っている場合、特例によって「固定資産税」や「都市計画税」が大幅に軽減されています(減額率は固定資産税で最大6分の1、都市計画税で最大3分の1)。
ところが、空き家を放置していて、周辺に危険を及ぼす可能性のある「特定空き家」に指定されると、この税金の特例が適用されなくなるので、固定資産税と都市計画税が大幅に増額される可能性があります。
また、特定空き家に指定されたときに、所有者が改善のための適切な対応を怠っていると、自治体が強制的に空き家を取り壊して、その費用を所有者に請求してくる可能性があります。
つまり、空き家を放置していると、固定資産税や都市計画税が何倍にも増額されるだけではなく、空き家を強制的に取り壊されて、その費用負担が発生するということです。これは、増え続ける空き家対策のために策定された「空き家対策特別措置法」による措置です。
そのようなことになったら大変ですから、特定空き家に指定されないように、適切に住居を管理しなければなりません。特定空き家に指定されるのは、空き家を放置して倒壊の危険性が発生したり、朽ちて周辺環境に深刻な被害をもたらすおそれがある場合ですから、きちんと管理しておけば、回避できます。
特定空き家とは、以下のような状態の空き家です。
(イ) そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(ロ) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(ハ) 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(ニ) その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
